this worthless life

思ったことをそのまま書きます

映画『花筐/HANAGATAMI』感想

 

今年初めての映画かな。

大林宣彦監督の最後の映画ということで観に行った。

若い頃、テレビの深夜劇場で鈴木清順監督の『ツィゴイネルワイゼン』を観た。

正確には最後まで観ていない。途中で寝てしまった。なんだか訳がわからなかった。

その映画を彷彿させた。『ツィゴイネルワイゼン』も今だったら見終わった感覚が違うかもしれない。

エンドロールが流れだし、身体が軽く震えた。それぐらい凄い映画だった。いや、申し訳ないが、最近見た他の監督とは格が違う。

『転校生』『さびしんぼう』『異人たちとの夏』どれも非常に好きな映画だった。それらは人間の孤独や出会いと別れをノスタルジー豊かに描いていた。

『花筐』

真珠湾攻撃が始まるよりも少し前、榊原はアムステルダムに住む両親の元を離れ、唐津に暮らす叔母の元に身を寄せ、海のそばの大学予備校に入学する。あどけない彼は反骨的で大人びた鵜飼(抜群に男前です)と吉良に好意を持つ。叔母(常盤貴子。美人です)の亡き夫の妹(この子も非常に美人です)。彼女は結核の病で病床に臥せっています。妹の友人たち。鵜飼、吉良。

上流階級の叔母の家で、7人で囲む洋風の食事やダンスのシーンが非常に美しい。この食卓の風景からは戦争の影はどこにもない。

命が少ないことを感じる女学生が考える生きること。

自分はやがては戦争で死にゆく身なのだと考える青年の生きること。

歩けなかった自分が歩けるようになった時、自分のせいで母親が死んだのではと懺悔する青年の生きること。

戦争がはじまり、知り合いが一人また一人と消えてゆく。

「娼婦が一番偉いのさ」

 

  ゆきずりの まぼろしの 花の宴 苦しくも たふとしや

 

ほんのひとときかもしれない。青春時代の花の宴。

ピンク色の桜の花びら。赤い血。山。海。赤い彼岸花。大きな月。耽美な映像は圧巻です。

日本人である素晴らしさ。ラ・ラ・ランドのようなハリウッドのハッタリとは違う、本物の日本の映画を観ることができました。

※私はハッタリ映画のラ・ラ・ランドは大好きです。

 

ポールオースター『ムーンパレス』 感想

去年の暮『この声をきみに』というNHKドラマがあった。

朗読教室に通ってくる人たちの物語だが、そのなかで『数学的媚薬』が紹介された。話の内容はオーヘンリーの『賢者の贈り物』に似ていて、バイセクシャルな二人の青年の実話だった。

「ポールオースターって知ってる?ナショナルストーリープロジェクトって本。その中の数学的媚薬がすごく良かったんだけど」

すると本棚のなかを探し出し『ナショナルストーリープロジェクト』を差し出した。

「知らないかもしれないけれど、うちにはたいていの本はそろっているからな」

どうやらそのようですね...。

ラジオ局に送られてきたちょっといい話、奇跡的な話の実話を集めたアンソロジーです。カテゴリーが分けられていて、『物』『動物』とかは読むのに時間がかかりました。愛、死、戦争、それらの信じられない事実、声を出して笑える事実、神様はいるんじゃないかと思えるような奇跡的な話が続きます。

「これよかったよ。面白かった」

「フーン...俺は読んでないけど」

「???読んでないの???」

「ちょこっと読んで辞めた」

そりゃあなたは感動的な話に興味ないものね!

「ポールオースターは他に面白いものがある」

と言って渡されたのが『偶然の音楽』

これがめっちゃくちゃ面白かった。

孤独な青年が大金を掴み、家族を失ったことから、ここではないどこかへ行きたかった。ある人との出会い。未来を生きようとする思い。フランス映画のような結末。

そこで一番人気の「ムーンパレス」を本屋で買ってきた。

「人間の人生というのは、無数の偶発的要素によって決められるのです」

「偶然なんてものはありゃしない。そんな言葉を使うのは無知な人間だけだ」

これはいくつもの偶然が重なって最後にひとつにまとまります。

叔父を亡くし、天涯孤独になった青年は世界の混沌に身をゆだね、社会との苦闘を辞めようとした。偶然知り合った女性が探してくれて助かることができた。そして車椅子の老人の世話をするアルバイトを見つける。その後亡くなっていたと思っていた父との出会い。自分のルーツを知る。ユタの砂漠を一人で歩くことになる。何もかも失って自分の青春は終わりを告げる。

悲劇的な結末は好きではありませんが、2作とも悲劇的結末です。

これがむっちゃくっちゃいい。何もかも失ってみて初めて自分が見えてくる。そして新しい未来がくる。

「ムーンパレス」おすすめです。

変な映画を観るより、素敵な本1冊読むほうがずっといい。

年末年始はポールオースターにはまっていました。

映画『麦秋』 感想

北鎌倉が舞台になっている映画に、是枝裕和監督の『海街ダイアリー』がある。

吉田秋生の原作漫画が大好きなせいか、この映画には違和感があった。

漫画とは別物だと思った。まずキャスティングに問題があった。長女は綾瀬はるかのような柔和な女性ではない。凛として芯の強い女優にしてもらいたかった。長澤まさみは最適だった。

当たり前の話だが、ストーリーが凝縮されていた。原作は一人ひとりの人生がもう少し細かく語られている。

鎌倉の美しい風景が非常に印象に残った。

小津安二郎の映画『麦秋』を観て、是枝監督はこういう世界観を描きたかったのだと思った。北鎌倉に住む、普通の人々の何気ない日常。鎌倉の風景。日本の美しさ。

日本の伝統。品のいい言葉遣い。品のいい女性。周りに流されないで、自分の考えをしっかり持った女性。終戦からしばらく経った日本。家族の在り方。年をとって子供たちがそれぞれの道を選んだ後のその先。

懐かしい言葉を耳にしました。

はえちょうの中にコロッケがあるから」

はえちょう」 あったなぁ。子供の頃、食事の上に蝿が来ないようにカバーをかけていた。

「大和はまほろばじゃ」

まほろば。

親が思うように子供は道を選んでくれないものです。

親が思い描いた結婚相手ではなかった。

娘が嫁いだ後、父親と母親がつぶやく言葉。

「今が一番いい時期かもしれない」

最後に写真屋さんに来てもらって家族写真を撮ります。

昔はこういう撮り方をしてもらっていたんだなぁ。、

昔の映画女優さんは、品が良くて美しくて生活臭が全くなくて、本当に女優さんでした。

日本の良さを描いた映画です。

さぁ、この辺で本を読もう!

 

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映画『嫌われ松子の一生』 感想

以前から観たかった映画。中島哲也監督の『嫌われ松子の一生

中島哲也監督の映画を最初に観たのは『下妻物語』。これが非常に面白くて素晴らしかった。ロココ調のファッションや刺繍の好きなロリータ深田恭子とヤンキー土屋アンナが絶妙だった。

そしてその後観たのは湊かなえの『告白』。松たか子が狂ったような先生を演じて、これまた素晴らしかった。

嫌われ松子の一生

中島哲也監督は天才です。ティムバートン監督の『シザーハンズ』を思わせるような、色鮮やかな景観。空の青色。緑の芝生。黄色や紅の花。そしてあたたかな音楽。それがこの不幸で孤独な松子の人生と素晴らしく調和していた。

おばさんが亡くなったと父親から連絡を受ける。川のそばで殺されたらしい。そして甥は松子おばさんの人生を様々な人から知らされる。

松子おばさんのことを不器用な形でずっと愛していた教え子。

神の愛とは何ですか

あなたは心底人を憎んだことがありますか。

その人たちのために心の底から祈れますか

人間の心は弱いものです。

でも神の力にすがればそれができるのです。

教え子は不器用で不幸せな松子のことを神様だと言った。

人は誰かに何かをしてもらうよりも、誰かに何かをしてあげた方が大切なのだ

もしこの世に神様がいて、それがおばさんのよう人を笑わせ、人を元気づけ、人を愛しだけど自分はいつもボロボロに傷つき、孤独でファッションも全然いけてなくて、そんな決定的にどんくさい人なら、おれはその神様を信じてもいいと思う。

ノートに書かれた

『生まれてきてすみません』

良い映画を観たな、と余韻が残る大好きな映画です。

 

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人生初の着信拒否

携帯電話を利用し始めてかれこれ10年以上になると思う。

初めて『着信拒否』をした。人生初の着信拒否。それも絶対にしてはいけない人に。

多分その人も、ビジネス上で着信拒否されたのは初めてだと思う。

詳しいことはブログでは書きたくないが、何をどう考えてもその人が悪い。

100歩譲って私にも非があるとすれば、1%にも満たないと思う。だいたい私は顧客だ。『接遇マナー』を少し前まで教えていたが、この人に教えてやりたい。『個人情報保護法』も教えていたが、それも教えたい。事務員の隣で、ドアを開けっぱなしにして私の個人情報を大声で怒り叫ぶこの人はいったい何様だ。知られたくない個人情報を事務員を隣において話した。事務員は私の顔を観ながら笑っていた。何なの?腹が立ったから居留守を使って電話に二度ほど出なかった。すると10倍返しが返ってきた。

そして着信拒否をした。

着信拒否をしていたこの数週間、非常にハッピーだった。メンタルは安定するし、何よりも履歴が残らない、それがすごくいい。着信拒否は履歴が残らない。問題が一つある。今度その人と会うときどんな顔をしたらいいのだろう。

それが昨日だった。

ドアを開けた瞬間、にっこり笑って「おっはようございまーす」と言ってやった。

「はい」と言ってから神妙な面持ちで

「先週ずっと電話をしていましたが繋がりません」

「携帯電話が壊れていました」

「じゃあ、どこに電話をすればいいんですか」

「直りました」

本当は「チョーむかついたので着信拒否をしてました。私誰かからDVをうけたみたいなんですぅ」と笑いながら言いたかったのだが、蛇ににらみつけられたカエルは、そんなことはできない。

非常に重苦しい雰囲気が続いた。

7月からこの半年、その人と出会ってから私の精神状態はボロボロになった。仕事を辞めてやりたいことがいっぱいあった。それができなくなった。自分の生きてきた人生を見直すきっかけを作った。

そして自分が今していることが非常にくだらなく思えた。何もかもがくだらなく思えた。

昼ドラの黒柳徹子の人生は面白いけれど、なぜ朝ドラはつまらないのか。

私がその人に出会ってからの半年のほうがよっぽどドラマチックだった。

その辺のつまらない映画を観るより、私の半年のほうが面白いぞ。

書きたい。

ブログじゃない何かに。初めてそう思った。

14日に事務所に行くのが最後になるだろう。

着信拒否した後だから、今度は拷問が待っている。

本当は「固くお断りします」と言うつもりだったのだが、なぜか行くことになった。

事務員さんがお茶を持ってきた時「いりません」と断ろう。

それくらいのささやかな抵抗はしよう。普通に考えたら大喧嘩になるだろう。向こうは怒り狂って大声で叫ぶのは目に見えている。

おもしろき こともなき世を おもしろく

それを適当に面白くあしらってみたい。

電話は直りました、と言ったから電話がかかってきたらどうしよう(笑)

 

 

森絵都『みかづき』 感想

久しぶりにパソコンを開いた。

今まで何をしていたのだろうと考えると特に何もしていない。

『ELLE』という嫌いな映画を観て、感想を書く気にもなれず、題名を忘れたが、後味の悪い小説を読んで、感想を書く気にはなれず。

23日からの4日間京都と高野山に行っていました。

高野山の感想はまた書きます。

森絵都みかづき

森絵都の小説は『カラフル』とか『リズム』とか、どちらかと言えばジュニア向けのようで好きではなかった。
この本はTSUTAYAの座り読みで何気なく手にとって読んだ本だった。三分の一ほど読んだところでけっこう面白いんじゃないか、と思い、図書館で14人待ちの状態で予約をしてやっと借りることができた。
後味のいい小説は読んで気持ちがいい。結構好きでした。
文部省を否定して塾の必要性を見出し、塾にすべての情熱をかけた女性。温和な夫。三者三様の子供たち。そして塾を否定した孫。
結果的に人間の根底にある芯の部分がしっかりしていれば、たとえどんな道に行ってもしっかりと生きることはできるんじゃないか。
なぜ教養が大事か。何かを自分で選択するとき、インテリジェンスが必要になるのではないか。
勉強嫌いだった三人娘の一番下の子にしたって、父親から「英語ができるようになれば世界を見ることができる」と教えられ、彼女は彼女なりの人生を歩むことができた。
自信のない孫は、ちょっとしたことから勉強を教えることに意味を見出す。

塾の経営から身を引いて弁当屋になった次女は潔かった。
性格も生き方も違う人たちが、それぞれ教育に関する考え方を語ります。
 塾を辞めさせられ、身を引き、世界を見て回り、そして見聞を広め、笑って家族と接することのできるこの夫は理想的ですね。

『フラニー/ズーイ』 感想

日曜日に『ブレードランナー2049』を観に行った。

その前の日、偶然以前bsで録画しておいた『ブレードランナーファイナルカット版』があったので聞いたら「名作だからDVDを購入した」と言ったので、削除する前に観ておいた。うーん、私にはいつまでたってもブレードランナーの良さが分からない。ファイナルカット版と劇場公開版はラストの風景が違うが、どちらかと言えば劇場公開版のラストのほうが好きだ。ファイナルカット版は部屋を出ていくシーンで終わる。劇場公開版は草原が広がる道を車で走り抜けるシーンで終わる。

それで『ブレードランナー2049』

うーん、☆3.5くらいかなーと思っていたら、隣に座っていた人が「非常につまらんものに仕上がっていた。あれはライトノベルか?SFとしたらお粗末だ」と言いながら出てきた。車に乗ると、運転しているあいだ中「だいたい放射能が強く残っているのに20年も生きられるわけないだろう。あんな廃屋のホテルで、なんで電気がつながっているんだ。あそこで蜂を育てていたが育つわけないだろう」「あれ蜂だったの?蜂は太陽と植物がないと無理だから何かの虫かと思ったけれど」「蜂だ。箱があっただろう。生命体を何だと思っている。周りがいつも暗かったけれど、時間設定は夜に限定しているのか?」話を聞いていたら、☆3.5がぶっ飛んでしまった。

それで映画『ブレードランナー2049』の感想は書かずに、昨日読み終えた『フラニー/ズーイ』の感想を置こうと思います。

サリンジャーは精神状態がまともな時に読まないと大変なことになってしまう。『ライ麦畑でつかまえて』は精神状態が最悪な時に読んで、とてつもなく鬱屈した気分になってしまった。今は比較的正常です。

サリンジャーは『ライ麦畑でつかまえて』が有名ですが、『フラニー/ズーイ』のほうが個人的には断然好みです。我が家にあったのは『原田敬一訳』。古いせいか『かたわ』という差別用語が何度も出てきます。『豆博士』の番組に出ていた博学で容姿端麗な家族。聡明ゆえに様々な矛盾や欺瞞に気付いてしまう。両親やフラニーの恋人、大学そして社会。彼らは相手が社会的に見て素晴らしい人間 を望んでいる。誰に紹介しても恥ずかしくない人間。そんな異常な中で自分たちはこんな『かたわ』に育った。どうすれば幸福ないい子になれるのか。まわりは欺瞞に満ちている。

<太った婦人>のために靴を磨け。<太った婦人>のために滑稽であれ。だれもが<太った婦人>なんだ。

最初はフラニーの異常な会話から始まりますが、この小説のかなりの部分をフラニーとズーイの会話で占めています。

紛れもなく名作です。この小説を読んでサリンジャーをもっと読みたくなりました。