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this worthless life

思ったことをそのまま書きます

bsプレミアム映画 『生きる』 黒澤明

 

若い頃は黒澤明映画は苦手だった。暗くて重厚で良さがわからなかった。黒澤監督がまだ生きていた頃、『八月の狂詩曲』を見たがそれほど印象に残っていない。10年以上前にテレビで『天国と地獄』を見た。この映画は比較的分かり易かった。まぁいい映画。数か月前に『夢』を見て、なんだかわからないけど印象に残った。今回『生きる』。白黒映画だが、名監督の良さがわかる年になってきた。年齢とともに、映画がわかりだす。

カフカの小説『変身』で主人公は家族のために働き、ある日突然虫になる。そして家族から邪魔だと石を投げつけられ死んでしまう。主人公が死んだあと残された家族はピクニックに行く。確かそんな内容だった。

この主人公も若い頃妻を亡くし、30年間市役所に勤めながら一人息子を育ててきた。ある日、自分が胃癌だとわかる。残された命は半年。家に帰ると、息子夫婦は父親の退職金のことを話している。「まさか墓までお金をもっていかないだろう」と笑っている。30年間自分は何をしてきたのだろう。目に見えない膨大な時間の浪費をしてきた。飲み屋である作家と出会い「人間は人生を楽しもうとする貪欲さをもっているんだよ」と酒や女にお金を使った。何かが違う。若い女の子に「そばで話をしてくれるだけで幸せだ」という。「私は小さな犬のぬいぐるみを作っているときが幸せだ。あなたは何か作らないのか」自分は時間がない。自分の作りたいもの。そこから彼は本気で仕事をするようになる。市役所でたらいまわしにしていた、以前から苦情のあった土地を、住民の要望通り公園を作ることに精を出す。そこから突然シーンは葬式に移る。息子や親せきは若い女性がいたから張りきったんだろうという。あの公園を作ったのは私だ、と市の上層部は話し出す。そして彼が亡くなった後、市役所はまた同じように住民の要望をたらいまわしにするいつもの仕事が始まる。

うまく言えないけど、名作です。これは黒澤明でしか作れない映画です。カフカと違うのは最後の半年、本当に自分の意を貫き通して生きたこと。そしてそのことで幸せになったこと。自分の命があと半年だと死刑宣告されたら何をするだろう。

 

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